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本館の改装工事のため、再録&連載用です。
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6話「実践訓練」

 あの後は、その場にへたり込んでしまっていた。
気持ちがばらばらになってしまっていて考えることが出来ない。悲しみと喜びが
いっぺんにくるとこんなにも苦しいのかと思うと涙が頬を伝う。
                           
                       

                              すっごく、真っ白で空っぽだよ


しばらく、その場に居たもののやることはまだまだ残っている。
少し落ち着いたのでよろよろと動き出した。今の自分は少し滑稽だと思う。
自嘲もありつつかばんを取りに教室に向かうことにした。
ガヤガヤと騒がしい教室の中を横切り自分の席に座る。
机につっぷして少しばかりの仮眠を取る。
「・・・・? か・・・・・泉佳?空調ここじゃ寒いよ。寮に戻ろっ」
揺り動かされて顔を上げるとすっかり教室は人気が無くなり
愛香と幸可と私だけになっていた。
「・・・仮眠のつもりがほんとに寝ちゃってたんだ。。。」
肌寒さを感じて、ブルッと身震いをすると椅子に掛けておいた上着に袖を通す。
「疲れてるよ?なんか、あった?」
まだ、頭がぼんやりしているけど愛香が青白い私の顔を覗き込んで心配そうにしてるのが分かる。
食事も済んでいないが簡単に食堂でサンドイッチを包んでもらうとけだるい体を引きづりながら
寮の自分の部屋に戻った。
無理やりにサンドイッチを胃に押し込んでベッドに横になるとすーうっと眠ってしまった。
起きてもけだるさは抜けずにひどく疲れていた。
だが、訓練を休むわけには行かない。
休むこと辞めることはここでは死を意味しているからだ。
今日は技術とか体術とか集中力と体力を使う講義ばっかりだから
少しは気がまぎれるかもしれない。
朝食の後にまずは技術。
と言っても戦術シュミレーションなのでほとんど、後の体術の講義と変わらない。
最近は実践的な講義ばかりなので軍隊っぽいです。
案の定、夕方にはぐったりで迷いもどこ吹く風。
すっかり、いつものペースに戻っていることに安堵していた。
「ん~~~~ふぅ」
グッと伸びをしてリラックスして愛香たちに元気をアピールしに行った。
「おつかれ!二人とも」
「お、元気復活?」
少しだけとりとめの無い話をした後、資料とにらめっこ。
作戦と布陣を確認して予備戦をすることになった。
地図にある目的地に行って、指定された物を取ってくるだけなのだが
1箇所に付き1つだけ。
なので、早く抜けないとそれだけ追加講義やテストが増えるとあって
相当な気合でみんなが予備戦に臨んでいる。
サバイバル訓練とでも言おうか、卒業後は戦闘になるはずのところに行くことが
ほとんどで調査と言うより鎮圧とか制圧・防衛がメインで回ってくるからだ。
さぁ、作戦スターーーーーーート!!!
 

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5話「広がる波紋」
 朝起きると疲れのせいか、朝からぐったりだった。
疲れと寝起きなのとで頭はボーっとしたままだったがそこは慣れたもので
手際よく荷物をまとめながらまだ夢の中の幸可を起こす。
「さち~~~!朝だよ。ご飯が無くなるぞ~~~~!!!」
「っぬ、ふはぁ~~~~。ご飯はダメだむぉん」
寝癖を付けたままでまったりと準備し始める。
トントン
「起きてる?泉佳!さち!」
毎朝、きっちり同じ時間にしっかりものの愛香が迎えに来る。
「起きてるよ~!もうちょっと!」
毎朝のことではあるものの遠いのもしんどいものである。
長々と訓練棟への道でテストに備えて
テキストを開いたり分からないところを聞いたりしながら
歩いているのでぶつかったりすることもある。
訓練棟に着いてもどこもかしこもテストの話だけ。
朝食を食べながら今日の予定を組み立てる。
クラス会議で聞いて以来ずっと続けている習慣で
おかげで講義にも付いて行けるようになった。
かくして、最後の最後にテストが始まる前の
詰めに勉強してきたところをみんなと確認しあって
最後のテストに突入!!
テストでよくある記号選択の問題など一つもなく
すべてが書きこみ式の応用問題。
目が回りそうになりながら
必死で書きこんでいく。
数問の引っ掛け問題が解ききれず残った教科がいくつかありつつも
これなら、今回のテストもパスできる!
肩の力を少し抜いたところで葵に呼ばれた。
「ちょっといい?話したいことがあるんだ。ここでじゃなくてさ」
ここでは出来ない話というのも気になったがそれ以上に
葵の思い詰めた表情が気になった。
場所は変わって、訓練棟と先輩たちの居る基地棟の境目あたり。
監視カメラはあるものの、人目があまり気にならないので
深刻な話をするときにはみんなココをよく使っている。
「あのさ・・・」
それまで、硬く口を閉ざしていた葵が意を決したように
話し出した。
「愛香が嫌いとかけんかしたからじゃないんだ・・・・・・・その。えっと」
てっきり、愛香のことで相談に来たものだと思っていた。
出会った後、しばらくして愛香が葵に告白した。
OKがもらえた愛香は今までで一番明るくて幸せそうだった。
それがこのところ、お互いに言い出さないものの
何か不満そうにしていたのがクラス中で心配しないものは居ないほど。
「愛香のことじゃないの?」
コクッとうなずくと葵はまっすぐに私を見てこういった。
「泉佳、好きだよ・・・愛してる。」
答える間もなく軽いくちづけ・・・・・・・・・
「っ!ちょっと!なんで?こんなことするなんて・・・・」
いろんな思いが駆け巡っていた。
葵にわずかでも恋心を抱いてはいたけど、誰かの幸せを
奪ってまで欲しいなんて思わなかった。
うれしい気持ちと背徳感で涙があふれた。
「・・・・・・ごめん。今、自分のしてることがどう言う事かも
傷つけることになるのも分かってる。」
言い訳でしかないよと罵倒したらよかった。
それ以上に確信に変わってしまった自分の思いが
狂おしいほど嫌になった。
泣き崩れる私に葵は
「すぐでなくていいんだ。
どんな結果も受け入れるつもりで居る。
少ししたら、答えを聞かせて・・・・」
それだけ言うと葵はその場を去っていった。

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4話「冒険はやっぱりファンタジー」

 気になりだすと止まらないのが私の性分。
なんだったんだろう、あの夢と真っ白で何も書いていない本。
授業中だけど気になってしょうがない・・・・でも、ノートはしっかりとってます!
そんな、ぼんやりしているところを見つかったのか怒りマークをつけた先生から
お決まりのチョークミサイルが飛んできた!!!!!!
でも、私もそうそうぶつかることもなく大概かるく首を傾けパッシっと手で捕まえる。
「岸島さん!まじめに!!!!」
「すみません・・・・・」
素直にぺっこっと頭を下げた後、先生にチョークを投げ返す。
再び、カリカリとノートを書いているとあと少しで授業が終わろうと言うところで
ノートが一冊埋まろうとしていた
(ぁ、ノート買い置きあったかな)
ごそごそ探してみると机の奥のほうに折れ曲がっていたノートが出てきた。
書きづらかったがとにかく次の休みの時に買って書き直そう。
で、お決まりのテストが始まるので範囲が発表されたわけですが・・・・・・
テキスト半分って・・・・・1冊の半分て広すぎる(泣)
言うまでもなく一瞬にしてグロッキー。
唯一の救いは自習とクラス会議。
それまでは資料作成と作戦を立てて勉強と暗記しなくちゃ。
クラス会議は恒例「月間表彰とテストの山当てw」
月間表彰では先生に内緒で行われているチョーク避けと
前回テストの山当てのベスト3の発表と副賞としてクラス長の葵から
食堂の割引券が与えられる。これが楽しみで頑張るものが多い。
例によって上位にはそうそうたるメンバーがそろっている。
チョークのほうは泉佳、葵それから、知らない東條、鷹見川、蘭郷
と言う生徒。山当ては鷹見川、幸可、愛香と言う面々だった。
その後は、これでもかと言うほど勉強した。
葵ってやっぱ信頼されてるなぁ。まさに鶴の一声だった。
さすがに半日は堪えるよ・・・・・・・・・・・・・・・・クラス長・葵。
私はベットにバタンキューなのに愛香と幸可は勉強してたらしい。
タフだねー二人とも。
夢を見た。続きの夢。
図書室で本を見て、夢に落ちた。
別の世界について書いてある本で噂に聞く魔本なのは開いた時に感じた
不思議な浮遊感で分かる。
それは一人のお姫様が自分の住む世界について物語タッチに
書き上げていた。魔法が使える世界・聖と魔が混在している世界。
でも、図書室には確実に行った。
あの本を調べたくて行ったのに、調べたことばかりか行ったことが思い出せない。
ベットから起き上がると幸可が疲れて机につっぷして寝ていた。
時計を見ると時刻はすでに3時半をさしていた。
幸可を起こさないようにゆっくりとベットに横たえると
机の明かりを消して、もう少し寝ることにした。

 

 

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3話「不思議と本とお姫様」

 あれ以来、あのイグラドを見ることはなくなった。
なんだったのかは知らないけど、みんなと一緒に居るようになってから
だいじょぶみたい。
でも、なぜか図書室だけは愛香とも幸可ともいなくていいみたい。。。。。
あの一度、たった一度だけでいなくなってしまった。
でも、それからの不思議はどんな繋がりなのか?

 


 ここ最近のお気に入り、図書室。
愛香たちと居たいけど、すぐ誰かが誘っちゃうからなかなか
一緒に居られない。ちょっと、寂しい。
ひとまずの暇つぶしに図書室に来ることが多くなった。
いつものように目新しそうな本を棚の側によっかかって
読みふける。
よく、「座ったら?」っと声をかけられるがその半分以上が
上の空だった。
ここの図書室は部屋と呼ぶには広すぎるぐらい広い。
なにせ、蔵書30万冊という途方もない数だ。
ここまで来れば、図書室と言うよりは図書館である。
ここにはファンタジーから犯罪記録までを網羅している。
物語系から読み進めている訳だけど。
唯一の難点と言えば、文庫がここにはない。
すべてがハードカバーのため、一冊が分厚い。
ニ・三冊も読むと足が立たなくなるぐらいで
しょっちゅうへたり込んでた。
夕飯時になるとようやく、愛香たちと一緒の時間が取れる。
「最近、別々なこと多いよね。」
ふぃに泉佳はきりだした。
幸可も箸を止めて、ここ数日を振り返る
「そうだねぇ~。いつもはずっと一緒に居たのにね。」
「・・・・・・・班編成が近いのかな。」
頭の片隅においやっていたことを思い出す。
そう、はじめからそれは決まっていた。
卒業が近くなるとその後の
配属先での仮のチームが発表になるのだ。
この時期、うっすらそんな輪郭らしきものが
見え隠れする。
このままなら、私だけ別の班になりそう。
少し、気が重くなりながらも三人で居続けられることを
願い続けた。
その日はなんだか三人で居たくてずーっと部屋で
眠くなるまで話し続けた。
しかしだ・・・・・・・・寝てる間のあれはいったい・・・・・・・・
森の中の湖にたたずんでるお姫様においで
おいでされる言われはないはず。。。。
やっぱり、あの本のせいかな?
なんも、書いてなかったはずなんだけどなぁ。
小首かしげて朝から考え込んでいた。

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2話「困ったときのおときさん」
ヤットミツケタヨオヒメサマノカタワレ


 あれはいったいなんの事だったんだろうか?
そんな風に聞こえた気がしたけど。
「泉佳?」
「っん?え?」
ふと声がした方を見ると心配そうな顔をした愛香の顔があった。
ボーっと不思議そうに眺めるだけで言葉が出なかった。
背にしていたドアが開いて下から入ってきた幸可を見上げる格好になった。
「どうした?なんか、あったの?」
「・・・・・・・うん。」
それだけ応えて、ぐったりした美佳を二人はひとまずベッドに寝かせて
明日は休んだ方がいいと休みの手続きをした。
「愛香、泉佳になにがあったの?なんか、ぶつかった音もしたんだけど」
「それが・・・・・・・・・私もよくわかんないの」
困惑気味ながらもひとまずで説明をした。
「そっか、それって先生に相談した方がよくない?」
「でも、信じてくれんのかな?病院とか連れてかれたら嫌だし」
「こういうときはっさ」
一つだけ先生でも病院にも相談できないときの助け舟になれる人がいる。
食堂のおときさんだ。
彼女ほどいろいろ知ってる人はいない。
そうと決まれば、明日は相談しに行く絶好のチャンスだ。
 次の日の夕方、晩の食事ラッシュの仕込みのためおいしそうな湯気が立ちこめている。
そこでひときわバリバリ働くおときさんの姿があった。
二人はさっそくおときさんに声をかけた。
「おときさん!ちょっといい?」
タオルで顔を拭きながら
「あいよ!待っとくれ!」
と威勢のいい声がする。
「どうした。そんな顔しちゃって、心配ごとかい?」
「うん。あんまり、大きな声でいえないけど・・・・・・」
誰も聞いていないのを確認してから
近くのテーブルで話をする事にした。
昨日、部屋であったこと泉佳の今の状態を一気に話した。
「そうかい、それはねぇ・・・・」
そこまで聞いたおときさんがふぅっと息をはいた。
「そりゃあ、イグラド。ようするに悪霊の寄り集まったようなやつさ。」
「あいつらは人の因果の流れを根こそぎぶち壊しちまう。
しかし、あの子もとんでもないやつに目をつけられたもんだね。」
イグラド。二人もその名前には聞き覚えがあった。
最近習ったばかりの対人外物戦闘における基本知識。
その中でもSA+に指定されている最悪の敵である。
SA+、SS、SB、Aとランクがある中で訓練生である二人には到底たち打ち出来ない相手だ。
これが必然で起きたことなら、なんて残酷なことだろう。
イグラドに魅入られたものは人生を狂わされるという。
生きていても死んでもなお待つのは地獄だ。

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